憲法調査会
基本的人権の保障に関する件(法の下の平等)
平成16年2月19日(木曜日)
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| 山花小委員長 | 次に、松野博一君。 |
| 松野(博)小委員 | 内野先生、よろしくお願いします。 最初の質問は、きょう先生にお話をいただいた現憲法下での十四条を中心とした国内における平等、差別の問題とちょっと違った観点になるかもしれませんけれども、先生にお話をいただいて、国内において憲法の非常に大きな柱としてこの基本的人権の確立ということが挙げられているというお話がありました。一方で、憲法の前文の中に、国内外にかかわらず人類の普遍的な権利として基本的人権を尊重し確立をしていこうという宣言が述べられているわけであります。 現実的に、各国の内政不干渉という前提を超えて各国がさまざまな働きかけをするときに、第一の大義として挙げるのが人道上の問題、人権上の問題ということでありますけれども、今、日本国憲法のこの前文で、国内外を問わず人類普遍的なものとして挙げられているこの基本的人権の要素というのと、日本国内における基本的人権の要素の問題、これがそれぞれ同質のものであるのか、また違う、ダブルスタンダードになっているのか、その範囲とレベルについて、内野先生がどのようにお考えであるかについてお話をいただきたいと思います。 |
| 内野参考人 | 憲法の前文ですけれども、そこでは御案内のように、「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」という言葉があります。「人類普遍の原理」という言葉は、それとは少し異なった文脈で出てきますが、その点はさておき、憲法の前文で掲げられている「恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利」というのは、多分に政治的宣言という色彩を含んでいるものと考えます。と申しますのも、「全世界の国民」というのが主語になっているからであります。 これに対して、日本国憲法は、日本国民あるいは日本国に在住する人たちの人権を保障するものでありまして、その意味で、憲法十三条以下の条文で具体的に示されている人権保障と憲法前文での全世界の国民の権利の制限とは必ずしも性格が同じではないと考えます。 |
| 松野(博)小委員 | 次の質問は、一転して、具体的な事例に関してでありまして、私は常々、公然と行われているけれども、このことは人権上からいってどうなのかなと思っていることがありまして、それは刑事事件における容疑者、被疑者の実名報道の件であります。 一般的には、逮捕状が出た時点、起訴された時点で実名となり、そして敬称等が除かれて報道がされるわけであります。しかし、日本の三審制の原則からいえば、この時点ではまだ推定無罪とするというのが原則的な考え方でありますから、その刑事事件のあたかも犯人であるかのような思いを抱かせる実名の報道のあり方というのは、これは明らかな人権侵害ではないのかなというふうに考えております。 もちろん、客観的な証拠の中で、非常に犯人である可能性が高く、なお実名報道また顔写真等を一般に知らしめないとまた被害が重なるというような事例であれば考えられるかもしれませんけれども、今の場合は、ほとんど無差別に、逮捕状が出た時点、起訴された時点で実名報道に切りかわっていくというような状況でありますけれども、このことに関して、人権上の問題から内野先生はどのようにお考えかをお聞かせいただきたいというふうに思います。 |
| 内野参考人 | 詳しい実情は知らないのですけれども、現在でも、いわば軽微な犯罪については実名報道を差し控えるということが少し行われていると承知しております。 それで、一般には広く実名報道が行われているわけでありまして、その中には人権侵害の疑いがあるものも含まれていますけれども、ただ憲法論として言いますと、被疑者、容疑者段階での実名報道が行われたからといって、その多くが憲法違反の人権侵害になるとまでは考えておりません。 |
| 松野(博)小委員 | 先生のお話の中に、ハンディキャップを負った方の実質的な平等というのを、立法や行政政策によって、積極的差別是正措置を含めて推進をすべきであるというお話がありました。私もまさにそのとおりだというふうに思いますが、例えば、ハンディキャップを背負っている方々、一つの分野として身体的な障害をお持ちの皆さんを考えれば、日本の障害者として認知をされているというか正式に届け出を得ている方の数というのは、諸外国の比率から比べると非常に低いという現実があります。 これは先生のお話の中にありましたとおり、日本国が非常に同質性社会で、少数者に対して偏見を抱きやすいというような、そういう社会性が大きな影響を与えているものだというふうに思いますが、この実質的な平等を維持するに当たって、社会意識の問題でありますから、先生のお話の中にありましたとおり、憲法から外れた部分、憲法外の問題であるかというふうには思いますけれども、この実現のために今の、特に障害者の申請による届け出方式を先生はどう評価されているのかについて、お話をお伺いしたいと思います。 |
| 内野参考人 | 御指摘の申請の方式というのは障害者手帳の文脈かと思いますけれども、積極的差別是正措置などの形で車いすの人なども暮らしやすいような社会をつくっていくということは、申請方式とは別次元の話でありまして、御指摘のように、社会意識の変革の問題もありますけれども、あわせて、お金の使い方、予算の使い方という問題が大きいと思うわけです。つまり、少数者のためにたくさんの予算を、お金を使うことは必ずしも効率的なことではないという意識があるとしたら、そのような意識を立法や行政の関係者の側で変えていくことが重要だというふうに認識しています。 |
| 松野(博)小委員 | ありがとうございました。 |